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2008年8月

「枯葉に満ちた山の向こうへ」

色づく
  赤に
   茶に
    橙に
  モ
 ザ
      イ
    ク
 のように

やがて散りゆくことを知らず
絶える直前が美しいのだと
旅人は言ったとか言わないとか

追い立てるように
 風
  は
 吹

知らず気づかず時は駆け
やがて、は、もうすぐ、になり、いま、になる

時計の音は命を削り
きのう、きょう、あした
旅人は
 もう
  いない

指を立てても
風を感じることはできず
目を見開いても
散りゆく葉を見ることもできず
旅人の温もりは冷たく固く
美しさは儚さと同衾する


言ったことも言わなかったことも

やがて

もうすぐ、いま、散って
 ゆ


残骸と成り果てて
とうの昔に絶えてしまったとしても
風に翻弄されつつも
舞い踊り
 舞い散り
  舞い去り

言の葉は
死んでも詩として

風の翻弄の中で
時の吹き荒れる中で

死してもなお
 色づき
  舞い
   駆ける


色づく死
言の葉が満ちた
山に登ろう

理由は必要ない

そこに


山があるのだから



(現代詩フォーラム「詩とは何か祭り」参加作品)

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少女でも少年でもないのだから

少女である
ということが特権であった時代は過ぎ
少年である
ということが特権であった時代はもっと前に過ぎ
いまや
少女でもあり少年でもある
ということが特権であるかどうかも怪しい

死ぬ権利
ということが言われて久しい
死ぬ義務
ということは免れようもないので義務ではなく
いまや
生きながら死んでいく
ということが死にながら生きているのと区別がつくかも怪しい

峠を越えたあたりの山小屋で
ここで飢えていくのだな
と感じた瞬間に
目の前に一斤のパンがあり
あり難いと思いながらも
死ぬことも許されないのかと 希望を霧散させる

世界には飢えて死んでいく人が数多いるというのに
ここでは飢えること自体がニュースにさえなり
ニュースは娯楽でしかないことが
此処という存在を歪にしていく
そこには 現実感がない

薄情でどこかおかしいのかもしれない

表面張力のように無理して感じてるフリをするよりも
分からないことを分からないという
その強がりをどこまで許容するのか

さりとて
少女でも少年でもないわけで
いつ時代が過ぎ去ったのかも気づかず
ぼんやりしているうちに
死ぬことの役割を考えるようになり

死ぬ
ということは
どこかで飢えている一人が生きることに繋がるのだろうか
それとも
関係なく
此処に飢えられない人がもう少しだけ
飢えられないだけなのか

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「クチナシ」

 重そうな黒い カバン

文字だらけの書類
読みかけの本
 手垢塗れの手帳

着晒しのスーツに
 疲れた革靴

 前に立つ凛とした女性の
黒髪の戯れ

ガタンゴトン
 ガタンゴットン

揺られながら
つり革でリズムを刻む

 ガタンゴトン
ガタンゴトン

 収められた書類は
語ることなく

終えた仕事の遺骸
 揺られ埋葬される

カバン
 仕事の揺り籠

仕事の墓場
 カバン

ガタン
 カバン

ゴトン
 カッバン

黄色味を帯びた肌を
 熱気で紅潮させる

湿気の重みが
車窓を滲ませる

重そうなカバン
 デザインの画板

シュレッダーで
 跡形もなくバラバラに

何も語らず
何も語れず

 やがて忘れ去られる
ガバンガタン

次は新宿~
 合成音のアナウンス

抑揚のおかしな声
 継ぎ接ぎの注意

ガタンゴトン
 バタンガッバン

もう使われることなく
無かったことにさえされる書類

一斉に人が流れる

あ、まだそれバラバラにしなきゃいけないのに!

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夏の日の少年

明日
というのは
明るい日
らしい
少年は
少女を追いかけて
過ぎ去っていく
少女はいつまでも
少年よりも早く
大人で
少年は
たぶんずっと子どもで
だから
少年は夏の日のまま
夏の日の
ママを追いかける

亭主関白
という
掌の孫悟空

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「自問自答と風邪薬」

私は誰でしょう
こう問いかけて、応えてくれる人がいるだろうか
自問自答は風邪薬に似てあまり効き目がないのだが
半分は優しさで出来ているのでしょうがない(自分への)

どうにも居場所が無いようで
どこに居ても落ち着かないのです
ここにいても あそこにいても どこにいても

思えばほぼ全ての友人が
本名ではなくペンネームで呼びかけてくる今となっては、
役所か銀行か郵便局が逆に別世界のようだ
どちらも自分であり自分でないような
会社ですらニックネームでしか呼ばれない
更新物は自動更新なので、新たに申し込まなければ書く機会もない
この前とある件で散々名前を書かされたのが新鮮なくらいに

さて

言葉に何らかの力があるとして
名前にもそれは及ぶだろうか
及ぶとして名前を変えたらどうなるのだろうか
全てがリセットされる といったゲームの御伽噺ではないので
そんなこともないのだろう
いつの間にか定着しいつの間にか更新されていく

制服みたいなものか
中学生、高校生、ちょっと飛んで社会人(スーツ、ね)
それが人を表すようで
名前よりもそちらの方が優先されてしまったりもする
だからどんなに童顔でもスーツを着て子供料金は咎められる
あ~見た目だから、ね
そんなわけだから
名前を変えるのも制服を変えるようなものなのかもしれない

私は何でしょう


性別明記してても名前で間違えられるし
記号は記号でしかないのだから
それほど何が変わるわけでもないので
私は何、と問うたとして
問題は私が私である
という確信が無いところにあるのかもしれない
私って何だよ?

私が私を私として規定できないのに、何故問う必要があるのか
名前もジェンダーも肩書きも
結局は他人が識別する記号でしかないはずなのに
なぜこうも問う?

疑問のべき乗だ

数学は苦手だ

赤点だらけだったし

かと言って

言葉もうまく語れないのだから

いったい私は何なんだ?



ティーカップの底に残った角砂糖のようだ

いっそ洗い流してしまいたい

半分の優しさは 自分にだけ甘い

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20080817

わずかばかりの眠気片手に空を見上げて深呼吸して/風を掴み

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「空蝉」

暖かくなると頭に何か湧いている人が出る

とはよく聞くが

暑くなると いっそう頭が釜茹でで

どうでもいいようなことばかりを考える

むしろ思考停止

蛙の輪唱 蝉の輪唱

いや 蝉は臨床

釜茹での頭に聴診器

病んでますね!(嬉しそうに)

余計なお世話です

 ところでお名前は?(真面目な顔で)

  忘れてしまいました

 重症ですね!(とても嬉しそうに)

  余計なお世話です

 何か悩みでも?(笑みを浮かべて)

  なぜ色恋が売れるのでしょう?

 楽しいからでは?(面倒臭そうに)

  なぜ楽しいのでしょう?

 劇的だからでは?(ほとほと面倒臭そうに)

  そうでしょうか?

 そうでしょう(諦め顔で)

  だから歌うのですか?

 そうですね(神妙な面持ちで)

  でも僕は嫌なのです

 何がですか?(再び面倒臭そうに)

  疑問に疑問で返す答えも愛や恋を歌うのもこうしてあなたと話すのも、

  とてもとても嫌でなにもかもがどうでもいいことのように感じるから、

  それはそれは嫌なのです嫌悪です憎悪ですどうして僕はこんなですか?

 末期的ですね!救いようがありません!!(嬉々として)

こうして蝉の心療は打ち切られた

ほんとうはこんなことを聞きたいわけでもなく

もっと他の

たとえば なぜ何年間も埋まったままで 出てきてすぐ死んでしまうのか

なんていうことを聞きたかったのかもしれない

ミンミンミンミンミンミンミンミンと煩く反響する

その声がうっとうしいだけだったのかもしれない

だから

あいやこいをうたえないのかもしれない

あふれすぎている

あまりに

あふれすぎどれもがきれいごとでここちよく

だから だから

理由を探すことは

卵に醤油かソースか塩かケチャップかで揉めるくらい

どうでもいいこと過ぎて

蕩けた頭では考えるのも億劫だ

(もちろん それがとても大事なことだ ということは知っている)

蝉は美しい

謳歌している/生を

それができないことは

ちょっと寂しいかもしれない

または哀しいのかもしれない

トイレで紙がなかったときくらいには

かなしいかな

謳歌するには長すぎ

紙がないことに気付くのは遅すぎる

無味無臭の真実に

色と香りをつけた

それは歌い奏でる

だから剥ぎ取ってしまえ

虚飾に満ち満ちた アールデコの世界から

 喜んでください

 楽しんでください

 感動してください

押し付けのまやかしの埋め立てに使うほどに消費された

多彩な言葉から

もう眠りたい

望んだものでも望まれたものでもない

ただ在るだけの停止に向かってブレーキをかけつつ

慣性移動するからだを クラッシュさせてしまいたい

重症だ

暑さで参ってしまったに違いない

どこに行くのか

または 行くべきなのか

こたえなどないままに

煙を吹かしながら

ただ

さまよい

あるく

ある

手紙を書くこともなくなり

すっかり言葉も忘れてしまい

もう

見たいものを見る術もなくし

あるがまま見えるがまま

惨めになってしまった

すばらしい

毛穴という毛穴を開き

腐臭を放ちながら

前など見えず

後ろを振り返らず

わき目もふらず

無心にあるく

綺麗でも華麗でもなく

泥臭い心こそ

嘘くさいものごとをこそ

見据える真実が浮かび上がる

過剰装飾のラブホテル

サクラ写真の出会いサイト

臭う

香しいほど

そこは人ではなく動物のワンダーランド

オリジナルなどなく

パッチワークのように

ありとあらゆるものを繋ぎ合わせた

蝉ほどの純情さも持ち合わせていない 色香の世界

暑さで溶けてしまわないよう

走り続けよう

あと何十年か

消え去るその日を得るまで

蝉は抜け出てしまったが

殻ほどには人の形であるうちは

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「カラカラカタカタ」

雨も夜明けも飽きてしまった

漫然と死にゆくために

生きているわけではないはずなのに

すっかり感覚も磨り減って

のびきったゴムのように

慣性さえも失くしてしまった

あたり前の情景が

八ミリビデオのようにコマ送りの細切れで

切り取る術すらないまま

いつしか今日はテープが切れて

カタカタとリールだけが回っている

何を映し出すつもりだったのか

趣きぶかいセピアですらなく

カラーですらなく

落書きの線画のような

自分

腐りゆく自分

もう

切れてしまったのだろうか

そんな恐れさえ           心地よい

いっそ全てデジタルにして

上から水をかけて静かに埋葬すべきだろうか

なにも

残らない

   ように

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「昼下がりの憂鬱」

目の前に広がる光景は

ぎらりと反射するガラスだらけのビルのおかげで

わずかに十メートル先で遮られ

その隙間にさえ

絶え間なく人が流れ

流れ

意識の濁流が茹だる暑さで朦朧とする

流れ

流れ

いつからこんなにも人が多いのだろう

裏道に入れば

昼間なのに閑散として

廃墟のようなボロ喫茶があるだけで

開いているのか

それとも空いているのか

それさえもわからない

こういう店のコーヒーは当たり外れが大きいから

要注意だ

テストの山勘と同じくらい

外れたショックはでかい

当たればラッキー

だから

同じくらいに外れてくれるのが泣ける

入るべきか入らざるべきか

いつからこんなにも躊躇するようになったのだろう

遠く響く豆腐屋の音

引き売り

誰が買うかわからないけど

顔が見えることで安心するものもあるのだろう

ついつい億劫で

メールとネットで済ませてしまう

顔が見えないことで得る安心とは逆の

出来れば話したくもないので

一生この豆腐屋には縁が無いに違いない

空が飛べないことと同じ

縁が無い

喧騒と静寂が

ビルを挟んで背中合わせの都市で

静寂は華やかに死んでいく

一年後には消えてしまうテナントのために

人工の楽園が創られる

人の波が訪れ

やがて消えゆく一瞬のために

ガラスとアスファルトと

人工的な自然とでできる世界に

ただ新しさだけを求め

飽きたら捨てるだけのために

それでも

それでもこの都市で

生きていく

すべてを使い捨てて

失うものを得るために

または

初めから得るものなどないことを

忘れてしまうために

たった一つ確かな

立っているはずの地面さえ

暑さと眩暈であやふやになるのに

確かなことなどどこにもありはしないのだ

だから

ここで生きていく

ほんの少し

忘れかけたことさえ

何だったか忘れてしまい

忘却を支えに

流されていく

見上げた空の飛行機雲が

掠れて消えていく前に

掴まえることができるだろうか

たったいま

この瞬間に

忘れようとしていることを

朝起きて

なんとなく昼を過ごし

いつも通り眠りにつき

その繰り返しで

いつも同じ顔と会い

よくわからない世間話に相槌をうち

それとなくやり過ごし

過ぎていく時間

あまり多くの人に会っても

超えられない断崖のように

通じない悲しみを得るだけだから

繰り返しも悪くないと

一人

考えている

暑い日の昼下がり

コーヒーは粉っぽくて  とても不味い

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「Drop of Words」読了

iPプロジェクトのアンソロジー詩集。

基本有志参加で早いもの順?

選考等がないので、その分雑多感はありますが、

次回は自分も参加予定なので、あまり多くは申しますまい(笑)



「永遠、愛、季節を否定する会」和泉しようさん

ステキ過ぎです(笑)

詩と詞、詩文とコピーライティングの違い。

ネットで適当にカテゴライズすると、

前者がポエトリーで後者がポエム?

なんというか、書きたいことを一つ書かれてしまったような。

でも表現の方向性はまるで違うなぁ、と。

表現の良し悪しというよりも、主題とそれに対する表現の方向性、

というところで、この詩集の中でも五本の指に入れたいほど(笑)



「イイ子」「消えゆく」三奈さん

いずれも自分とその周辺との立ち位置を模索しているような詩。

もしかしたら凄く若い人なのかもしれないが、それはわからないので、

どちらでもいい話だから放置。

すごく素直でまっすぐな表現なので、

好き嫌いも分かれそうな気がするが、たまにはこういうのもいいと思う。

それこそ「好き」だ「嫌い」だ、をただ垂れ流しにしているのとは違うものが、

この詩にはあるはずだから。



「ひめ春蝉」青葉茂さん

どうにもやるせない詩。

ただ、それが嫌な感じなのではなくて、

ユーモラスな表現(というと語弊もあるのだが)でまとめられているので、

思わず笑みさえもこぼれてしまうような詩。

世界の捉え方に、こういう視線の設定もあるのだ、と

とても勉強になりました。



「空の向こうの草原に」未有花さん

とても童話的な詩を書かれる方(もしかしたら今回だけかもしれないですが)

この詩がいいなぁ、と思うところは、

浮かんでくる情景。

日本ではなく、ヨーロピアンな風景。

日常に囚われすぎていると、なかなか書けないかもしれない。

儚げで、それでいてどこか温まる詩。



「夢の中のあなた」石瀬琳々さん

あ~、もう直接ご本人様に感想送ってしまったので、

改めて書くのも恥ずかしいやらなにやら(謎)

幻想の中の現実、はたまた現実の幻想なのか、

その揺らぎの感覚が絶妙だなぁ、と。

表現の一つ一つはとてもシンプルなのですが、

その組み合わせが揺らぎを生んでいるように感じる。

一つ間違うと非常に生活臭が出てしまう言葉なのに、

そこを上手くすり抜けながら、その先を捉えている、というべきか。

シンプルでありながら、深みもある一つ一つの表現が軽妙。

最近はこの手の主題の詩はあまり読まないのだけれども、

久しぶりに。

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「ネット詩集 no name 24」読了

「未詳01」と同じ未詳24の編集詩誌です。

定価がなく、物々交換で、というあたり、

詩の価値についての気概を感じます。

それはさておき本題へ。

またぞろ気に入った?ものを好き勝手に感想書いちゃいます。



「白日」室生遥子さん

言葉一つ一つは平易なのだけれども、

とても重層的な世界を感じさせる詩。

ひどく哀しげな情景に、一条の光が射す。

流れが自然でステキな詩。



「フォークロウ」立花夜半さん

リーディングによいかも、と思いました。

物語様の詩。

全体に静かなトーンで、冷厳とあり、

ぽつり、と現れる暖かさが、一層それを際立たせているような。

自分の勝手な感覚でいえば、

最後の件はもう少し違った展開でも良かったかもしれない、とも思うけれども、

それを差し引いても良い詩だと思う。



「名前がつけられない海」三角みづ紀さん

一歩間違えると非常に後味が悪い詩になってしまうはずなのに、

どうして彼女はこうも巧く表現を選ぶことができるのか。

生の営みはかくも悲しみの歓喜であるのだろうか。

求めるが故に予め喪失が決められているものを、

どこまで求め、どこまで諦観できるのだろう。



「堆積」今唯ケンタロウさん

冒頭いきなり「キタ!」(ぉぃ)と思った詩。

こういう表現は、提示されると書けそうな気がするけど、

提示されるまでは気付かないんだろうなぁ、と自省。

あと、やはりこの人も日本語を大事にされているんだなぁ、とも感じる。

文法云々ではなく、

何かを表すのに、それがどんな言葉で、どんな仮名・漢字であるべきか、だ。



***



なんだか前半掲載の詩に偏ってしまったけど、まぁよしとしよう。

後半の掲載詩にもいくつか気になるものはあったのだけど、

ちょっと「?」だったりする部分もあったので、割愛させてもらいます。

さて、最近詩誌やら詩集やらが溜まりまくっているので、

全部が全部感想なども書けないし書く気も無いわけだが、

しばらくはちょこちょここの手のエントリーが出てきます、たぶん。

なにより、感想ってやつは苦手なのですよ。

人それぞれ解釈も見方も違うだろうし、

不詳未熟で何を書いているのかと、自分で突っ込んでしまいそうで(苦笑

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「調律師と靴紐」

誰もいない路地裏の街灯の下
空を見上げて呟く
少女 一人
星も月もない夜に
膝を抱えてうずくまり
火照った脈を測りながら

忘れ去られた夢を食べながら
獏は大きくなった
誰も望みもしない
誰からも望まれもしない
大人になった
やがて空を翔るために

薄明かりが漏れる街並みの縫い目
旋律が縫い付ける虚無と現実
少年の声
ファルセットの響き
誰も気づかない暗闇の中
調律師は現われる

失われた境界
人と世界を繋ぐはずの
解けた紐を
再び結ぶために
調律師は歌う
善も悪も虚偽も真実も
全てそれが世界であると

曲がった胡瓜を捨て
葡萄から種を奪いながら
切り刻んできた紐は
もう結びなおすことも難しい
それでも
調律師の少年は歌う

ファルセットの光は
闇夜にこそ輝くから
月も星もない夜
現われる
影も見分けが付かないほどに
旋律を奏でながら

やがて消えていく
星は掃除され
月はワインのつまみにされ
薄明かりはぼうと薄暮となり
闇夜は消されていく
調律師の世界は殺される

天使のような羽もない
ただの少年の調律師
やがて消えていく瞬き
調律師は大人へと調律され
喪失が成長を促し
大人の獏になる

鐘の音の祝福が
調律することさえも忘れさせ
流れに任された獏は
自分だけの世界へと帰る
音律の無い世界へ

解かれ切り刻まれた靴紐を残して

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ごめんなさい?

検索ワードでたどり着く人もいるけど、

今日のは極めつけ。

「同人誌 振込先」

・・・

・・・

え?

それっていったい何を・・・

役に立たなかっただろうことは想像に難くないけど、

そもそもその同人誌って何買おうとしてたの?

それだけじゃ目的にたどり着けないと思うんだけど。

・・・

う~ん・・・

あ、それと、

小説系のサイトからリンクを辿って来られた方もごめんなさい。

リンク元の事情でカテゴリーが「小説」に分けられてたりするのですが、

ここには一切ありませんので・・・

昔はちょこっとだけ書いたりもしてましたが、今は無いのです。

無駄足踏ませてすいません。

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「ほら、あの日の夏、今日の夏」

ふるふるとふりふりとしてふらふらと熱射ネクタイ袖から熱気

ほらごらん覗いて気づく胸の穴ぽかりと抜ける月明かりの影

昼夜と問わず流れるラジオから遠く聞こえるあの日の向日葵

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「モノクローム街道」

日めくりカレンダーを
まとめて捲るように過ぎる
感傷さえ許されぬ日々
疲れた旅人の
マッチ棒のような細い足
先を急ぐ大きな目
アリのように小さく
ゾウのように大きく
いつもそこに壁がある

藍墨茶の空
烏羽色の海
視界のモノクローム

交じり合い鬩ぎ合い
人の形を失いながら
フランス人形を握り締め
旅は果てなく続き
歩みは遅々として進まず
砂丘に足を取られ
ガスの霧に溺れ
絡め捕られる人の成れ果て

不器用の持つ切れない鋏
余計なものを切り刻み
何も得ることなく
やがて諦めゆくとして
それでも足は
一歩ずつ前へ
もしくは四つん這いで
一手ずつ後へ

輝かしい明日もなく
虹色の夢もなく
電子回路のノイズに追われ
感情を還元し
データ化し
解析する





時の何かは
汗と共に流れ落ち
水溜りとなって
渇き散る

遠い向こうの
顔知らぬ人の不幸よりも
目前の壁を叩く
薄皮は破れ
とめどなく血が流れ
それでも

それでも


それで?




コインの裏表のように
誰も気にせず
時として間違っているとしても
大切であればこそ
旅路の道連れに
血の澱みとともに
ぷっくりと膨らんだ血管が
破れて裂けて
偽者の金髪を染め上げ
無い答えを探す


***


始まりはいつも些細なことで
きっかけはいつもくだらなく
あたり前があたり前として
ただ
そこに
線を引く

一線

超えるべきか
越えざるべきか
迷うほどもなく
知らぬうちに破る境界
意味も価値もない教戒

蔑みの視線の矢が
その手を柱へと打ち抜き
折れかけた足を
網が掬っていく
救いなき日々
線を引かれ
破るだけの日々


苦味はコーヒーのようで
渋味は抹茶のようで
飲み干したため息の数は
輝く星よりは少なく
草原の花よりは多く


一晩の安らぎは
明日の苛立ちを産み
際限なく連鎖する




壁など登ればよいと
気づいていても
知ってはならないことだから
壁を叩き続ける

ふと現われる
扉を掴むために



枕などない眠りを胸に
旅は続く



似合わないテンガロンハットに穴を開けて
 
 
 
 
=====================
 
 
 
 
 
オカザキレオさんへ捧ぐ

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「蜃気楼」

川縁の土手の上
砂利道がザクザクと泣く
バットを持った集団
野球
ではない


唐突に囲まれる
幾人にも
財布もなく
時計もなく
なんら渡すものもなく
そんなことはわかっていたのだろう


目付きが悪い
それだけの理由
殴り甲斐もないらしく
威嚇だけの時間が過ぎる
そして解放

すれ違い様
生意気だ、と
言われた理由も
目付きが悪い
のだと

視力だけの
せいでもないのだろう
日差しに負けた
伏し目のせいでもないのだろう

きっと
目付きが悪いのは
性格のせいで
生意気なのは
性格そのままで
くだらないと感じたままに
目が語るのだろう


侮蔑を隠すでもなく
投射するのは
小石を投げるのに似て
相手の脳裏に
波紋をつくる

それでも
殴られるでも
いじめられるでもなく
まるで居ないかのように
過ぎてゆく
無視するほどもなく
周囲の世界に
自分はいない


たまに現れると
鬱陶しいので
ちょっとだけ絡むが
すぐに「居ない」と気付く

だから

世界を傍観する

諦観する


そこに
不在だからこそ

町行く人波に
飲み込まれながら
隔離し隔絶し

居場所がない
わけではない
から
こそ

炎天下
晴天下

ホログラフィーのように
抹消され気付かれざる自分を
投棄しよう

外在の不在として
不在の内在として

雨粒が降るように
砕けた先に
何も残らないように

蒸発し


やがて世界を挑発し


その無反応を

笑い飛ばそう


川面に浮かぶ
コンビニ袋ほどには
気付かれることも
ある

だろう

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「夏の日」

五年前
路面が煮え立つほど暑い夏
プールの栓を抜いたような夕立

中でぼくは
キミの嘘を受け止めた

小さな嘘
あまりに小さいから
雨上がりの水溜りに
そっ

浮かべてみた

三年前
ビルが蕩けて見えなくなるほど暑い夏
お風呂の栓を抜きながら夜

空を見上げて
キミの嘘を飲み込んだ

ちょっと大きな嘘
ノドの奥に引っかかるから
うがい薬と一緒に
ぺっ

吐き出してみた

一年前
不思議と涼しい風が心地よい夏
コーラの栓を抜いたような爽やか

日差しの中にぼくは
キミの嘘を忘れていた

すっかり消化して
しまったものだから
思い出すこともなく
ほっ

一息ついた

つい昨日
屋根の上で目玉焼きが焼けるほど暑い夏
固く動かないコルク栓を抜くようなひどく疲れた日

終わりにぼくは
キミの嘘と交じり合っていた

大きな嘘
大きすぎるから
見上げても見えない水星のように
すっ

夢から消えていった

じゅー

キミをぐちゃぐちゃにして
引き裂いて
その
どろどろ

流れる様を
笑いながら
食べてしまいたい

じゅー

目玉焼きの中に封じ込めた
キミの嘘

ぐちゃぐちゃのどろ


 に

そんなキミが
目玉焼きになって
夢の中に現われて
名前すら呼べなかったのは

なぜだろう

もう
覚えていない
キミの名前

どろどろのキミは
どくどくと脈打って
とろとろのキミは
あつあつの目玉焼きで

白い皿の上の
目玉焼き

ぐちゃぐちゃにして
絵を描けば

なんとなく憂鬱な
この今という時間を
箪笥の防虫剤くらいに
気にしなくて済むだろう

ぐちゃぐちゃにして
絵を描けば

洗い物という後悔が
    微笑んでいる

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アンビバレンスシティ

テレビのスイッチを入れる
あまり偉そうにも見えない小役人な校長が
あまり反省もなく頭を下げる

気付きませんでした


とりあえずの場の空気をつくり
権力という名のワイドショーは
いじめの報告はゼロでした

こちらは偉そうに怒ったフリをする


見慣れた茶番

予定調和の偽り


本質はいつも遠景に
迷惑そうに追いやられ
しかめ面で消えていく


心地よくすらなく
吹き飛んだ原発のように
溶け出して
混ざり合う
偽りの多重奏


いつだって

いつだって


徒競走は同時にゴールをし
皆が一等賞で

日本には軍隊がなく

会社には不正がなく

学校にはいじめがない



人は皆平等です

そんな偽りも続けていれば

いつしか偽りの真実になっていく



全員が白雪姫の舞台
それのどこが平等なのか

そうやって作られた平等と
個性を活かせという矯正が

アンビバレンスに心を裂いていく
裂きイカのように


そんなに平等が良いなら

財産を全て没収し
能力や外見の差さえ意味を無くしてしまえば

望みが適うはず



そう



強制収容所のように




哀しいかな
そこですら
看守との
共生で平等でさえなく


それが
いかに惨めで醜悪であろうと

人は

極限で
本質を体現するのだと


いつしか
そんなことすら忘れ

忘れたフリをして


偽りの中に
うわべすらない
得体の知れないものを生み出していく



みんな平等で
個性もなく
外見も同じで
複製品のように鋳型に納まり
劣等感を誤魔化し
才能を否定し



テレビを消す

偽りの拡声器を



自分の醜さは
いかにしても消すことができず

未熟であることを認めるが故に
未熟であることに気付くことを
誰かが覆い隠した


見慣れた番茶が

混沌と澄まされていく




そして今日も



明日も



見て見ぬフリを


知らぬフリを



気付かぬ



フリ







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「神様お願い」

神様お願い
ほつり祈ってから気づく
そんな神など信じていない


それは友人の名前を
交差点の真ん中で呼び間違えた時の
呆とした冷や汗
あるいは
言い訳の積み重ねで崩れてゆく
生の有り様か


ある日カラスが
グワッ ギャー
とゴミを漁りながら踊り
横を迷惑そうにブチ猫が振り返る

猫になりたい
と呟きもらす声は
カラスに調和して消えてゆく


存在の迷惑というほどに
誰かに何かを及ぼすでもなく
遠い空の向こうからぼんやり眺めるように
何かが誰かに届くでもなく


嗚呼、神は果たして自分であったか
信じられることも
在ることを認められるでもなく
無知無能の故に


であれば
もう一度祈ってみるのも悪くない

翼を

ください

どこまでも落ちて
ゆくために


空虚不信だからこそ

不在によって証明される浅はかな狂喜のために

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