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「昼下がりの憂鬱」

目の前に広がる光景は

ぎらりと反射するガラスだらけのビルのおかげで

わずかに十メートル先で遮られ

その隙間にさえ

絶え間なく人が流れ

流れ

意識の濁流が茹だる暑さで朦朧とする

流れ

流れ

いつからこんなにも人が多いのだろう

裏道に入れば

昼間なのに閑散として

廃墟のようなボロ喫茶があるだけで

開いているのか

それとも空いているのか

それさえもわからない

こういう店のコーヒーは当たり外れが大きいから

要注意だ

テストの山勘と同じくらい

外れたショックはでかい

当たればラッキー

だから

同じくらいに外れてくれるのが泣ける

入るべきか入らざるべきか

いつからこんなにも躊躇するようになったのだろう

遠く響く豆腐屋の音

引き売り

誰が買うかわからないけど

顔が見えることで安心するものもあるのだろう

ついつい億劫で

メールとネットで済ませてしまう

顔が見えないことで得る安心とは逆の

出来れば話したくもないので

一生この豆腐屋には縁が無いに違いない

空が飛べないことと同じ

縁が無い

喧騒と静寂が

ビルを挟んで背中合わせの都市で

静寂は華やかに死んでいく

一年後には消えてしまうテナントのために

人工の楽園が創られる

人の波が訪れ

やがて消えゆく一瞬のために

ガラスとアスファルトと

人工的な自然とでできる世界に

ただ新しさだけを求め

飽きたら捨てるだけのために

それでも

それでもこの都市で

生きていく

すべてを使い捨てて

失うものを得るために

または

初めから得るものなどないことを

忘れてしまうために

たった一つ確かな

立っているはずの地面さえ

暑さと眩暈であやふやになるのに

確かなことなどどこにもありはしないのだ

だから

ここで生きていく

ほんの少し

忘れかけたことさえ

何だったか忘れてしまい

忘却を支えに

流されていく

見上げた空の飛行機雲が

掠れて消えていく前に

掴まえることができるだろうか

たったいま

この瞬間に

忘れようとしていることを

朝起きて

なんとなく昼を過ごし

いつも通り眠りにつき

その繰り返しで

いつも同じ顔と会い

よくわからない世間話に相槌をうち

それとなくやり過ごし

過ぎていく時間

あまり多くの人に会っても

超えられない断崖のように

通じない悲しみを得るだけだから

繰り返しも悪くないと

一人

考えている

暑い日の昼下がり

コーヒーは粉っぽくて  とても不味い

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