カテゴリー「詩」の43件の投稿

詩/詞 「幻想少女絵巻」

1.
琥珀色の風に抱かれ
堕ち逝く季節に見えるは虚空

幾年幾日 時を越え
織り成す∞に重ねる呼吸

今宵 羽無し天使は森を駆け
乱れ咲く白薔薇に声を捧げる

透ける肌の少年を
経血で穢すのを止めないで
月に踊れ アリスたち
その優しき惨酷が物語になる日まで


2.
茜色の海に溺れ
過ぎゆく奇蹟に忘れた鼓動

幾千幾万 星を数え
溢れる無形の逢瀬悠久

夜毎 夢無き天使は月に舞い
泡沫の黒蝶に恋を預ける

透ける肌の少年へ
接吻の刺青は止まないで
砕け詠え アリスたち
その儚き背徳が永遠になる日まで


Interlude
(壮麗ナ堕落ノ門ヲ
 潜リ抜ケ舞踏場ヘト進ミ出デ
 戯レル指先ヲ解イテ
 深紅ニ染マル頬ヲ放チ
 狂オシイ甘美ノ時ヘ)


3.
透ける肌の少年を
欲望し欲情し離さないで
愛に踊れ アリスたち
その吐息の牢獄を祝福できる日まで

透ける肌の少年と
恍惚と絶頂に果てないで
哀に溺れ アリスたち
その閉ざせし間隙が聖杯となる日まで

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渋谷スクランブル

人一人殺してやりたいと
朦朧と願うことはわりと自然で
いっそローラーでぷちぷちと潰してまわろうかと屋外ビジョンを眺め

ふと背後を振り返れば
其処には殺してやりたいお前がいる

「おはよう」
などと笑いながら
今日もまた
殺されていく

お前が俺を殺していく
日々刻々
カレンダーを捲りながら

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詩「生きてまた死に逝く墓標で」

蝉の声が絶えて久しい
今年も夏が過ぎ、またいくつかの台風と暴雨が忘れられていく
 
雨の日は図書館がいい、集中できるから
とは数少ない友人の言葉
まるでゲームかアニメのように
黒ぶちの丸メガネをかけたセーラー服で呟いていた
 
果たして学生とは
希望も不安も他所に
生に満ちていた
 
翻って今はどうだ
30年を過ぎ、何もせずに過ぎ行く日々
緩慢に迎える死

耐えて輝く蝉ではなく
もはや抜け殻を保存するように
数十年の先を無為に流す

それでいいのか
それがお前の望みか

問われ自問し答えなどなく
ただ季節外れの空調が響く
 
活字こそが知の源泉だと
信じた日々は遠く
いまや得るものとてない惰性こそが
この書の廃墟を形作る
 
何を視る
何を知る

諦観という名の台風の目に
惰弱な脳とて安逸を得て
ただ老い逝くだけの肉体を
恨みこそすれ省みず
 
何を遺す
何を示す

ありもしない期待を望み
ありもしない能を望み

悔いるほどの何ほどもなく
アルコールとニコチンに溺れ

ただそれを望むのか
それともそれに甘えるのか

ルソーもピカソも遠く
漱石ユートピアは満州に消え
そんなことさえも気づかずに
何を描く、何を語る
 
所詮言葉は記号でしかなく
記憶は欺瞞でしかなく
記録は残骸でしかなく
 
ただネクタイに追われ
また家事に沈み
何を騙るか
何を識るか
 
ただ息をし
ただ視を向け
ただ歩き
ただ止まり
 
夏は終わり
祭は終わった
 
流されることなく
止まることなく
 
何を視
何を変える

知の墓標たる図書館に
今日もまた訪れる者一人

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「勿忘草」

ひっそりと沼地のほとりにしっとりと
薄青色の忘れ物

Vergiss-mein-nicht!

人知れず咲く一輪に
ふっつり切れた魂一つ

Vergiss-mein-nicht!

聞こえぬ叫びと心の裂け目
隠して埋めて見ないふり

Vergiss-mein-nicht!

思えば明日は遠くなり
昨日の明日は過ぎてゆく

Vergiss-mein-nicht!

届かぬ詩歌の忘れ物
真摯な紳士の落し物

Vergiss-mein-nicht!
Vergiss-mein-nicht!

いつからなにを失って
どこにそれを落としたの?

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「はなればなれ」

カーテンの向こうに呟いた言葉
春待ちの寒さの谷間に ふっ と漏らす溜息
ベッドに横たえた身体からいつしか遠くなりて
言葉の連なりが崩れていく

珈琲の香りに紫煙が滲み混沌としたワンルーム
手入れの行き届かないフローリングに
体温が足跡を残し そっ と足音を立てぬように起き上がる
意識の繋がりが薄れていく

言葉 身体 意識
乖離してゆくトリニティ

窓向こうとの結節点を失い
発される音は届くことなく打ち消され
それでもまた今日も起き上がり
手も声もその背には触れられず

扉が遮る亀裂の深さゆえに
はなれ とおく なりて
溶解していくアイデンティティと君のそれの狭間に
よどみ しずみ ゆきて


そして

今日もまた昨日からはなれ
ボクもまたキミからはなれ
言葉は意識からはなれ
何もかも
何事もなく当たり前のようにはなれ


繋ぎ留めるために失われていく言葉にしがみつく

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「Light the light」

東京タワーに陽が刺さる時分に煌々と輝く
窓から漏れる明かり 色とりどりの街灯 魅惑のネオン
徹底的に破壊的に光の砲撃は闇に報復する
茜色の夕雲はつかの間の闇の扉であった
それは遠い遠い昔話
おじいさんとおばあさんがいて二人がおじいさんとおばあさんの物語を孫に聞かせていた頃の話
蒙を啓くと称して夜を切り裂き始めた頃暗黒時代が終わりを告げたのは
名前付けだけではないのだろう

南満州鉄道に急行が走り、九州に戦後初の急行気道車が走り、高度成長の夢の超特急が東海道を走り
そのいずれもが「ひかり」と呼ばれていたことも今は遠い昔話
ひかりひかりひかり いつの時代も「ひかり」は進歩の象徴
あらゆる場所を光が覆い尽くし四方八方から浴びせられるそれはいつしか影を消してしまった
鏡すら無い時代 自分自身を見つめるもっとも原初の闇=影
それすらも見出すことは難しく 目映さ故に眩暈さえ覚え ワンワンと頭蓋の奥にこだまする
ノイズが狂わせるシナプスの光は心地よい誘惑とともに闇を忘れ
   ひかりとこだまが時空を切り刻み始めた頃 この島の夜も絶えていった

車窓を過ぎ去る田園はテレビに映るそれを変わらず
照らし出された深海からは発光の抗いが消え
アポロが月に置いた反射板は地球と月の間を光で貫き結びつける
知らないことは恥ずべきことであり口を開けばググレと蔑まれ
光の速さで世界中からインフォメーションを掻き集め
その中にはアポロが月に行かなかった話もあるわけで それは現代の御伽噺
知らない分からないことを光で照らし構築された妄想の砦
  きらりと光ることもない都市伝説の成れの果て

展望台から見渡す一円の東京は点点と、しかしあらゆる光で塗り潰し勝利の狼煙を上げる
闇を捨て嬉々としてあらゆるものを照らし照らされてゆく一日の終末
全てを見透かし見通し理解し把握するための白光は 高架下の駐輪場さえも陽光を浴びる菜園と見紛うばかり
目も眩み立ち眩み一歩進むことさえも困難な都市の回廊を彷徨い立ち止まる
身体を突き抜けるヘッドライトの群れに襲われ気怠い熱気を纏い
ホワイトアウトしていく夜に立ち竦み
僅かに生気を漂わせるのは足元で円を描く下水臭いビーグル達だけ
  眠ることも休むことも許されないアイアンメイデン


Light the light.
The dark is killed.
The all of the world is covered with the light.
We obtain the right
Of the light.
Called, called, and called!
The light shouts and the light is shot.
After frenzy, the light requests the dark.

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「no lapel badge or Ellie shows」

手を広げ縦に横に半径1メートルに満たない円を描く
そうして切り取った球状の世界に籠る
眺める世界は全てが偽りでありながらディズニーランドほどには裏切らない
其処は全てが嘘だけれども 此処は絶妙なバランスと巧妙な地雷
故郷 名前 国籍 性別 IQ TOEIC
あらゆるものを階級に認識に用いながらそれが蜃気楼ほどにも確かではなく
頬を撫でる風も掌の体温を奪う電柱も感じるほどには確かではなく
ミッキーマウスの皮を被ったダンサーのように人の川に流される

知ったわけではないが きっと今際の縁に立つ気分に似ている

銀座のディスプレイの中で着替え途中のマネキンが半裸で睨み
今日も一日視姦されなければならない身を哲学に語るとき
死んだはずのマルクスが東大の図書館にぼぅっと蘇える
どうやら資本主義が溶解しているらしいから共産主義の妖怪の時間なのかもしれない
欲しい物なんて無いのだけど何かを買わないと落ち着かないからカメラを買ってみた
手で囲った世界はすぐに消えてしまうからもう一度世界を切り取るために
切り取られた白縁の其れはもう二度と見ることも無いのだけれど
自分が誰か何かを考えるよりも余程輪郭を確かめさせてくれる
写るのは何も無い空であり誰もいない廃墟であり煩わしい生が無い
哀しくも素敵な数瞬の後にも無くなってしまうだろう世界

インク切れのプリンターがカタカタと音を奏でている

家族とか恋人とか友達とか諸々のアルバムに収められた肖像
その関係はポストモダンの蜘蛛糸に絡め取られていく
真っ赤な四角い其れは私が発する言葉という言葉を飲み込んで
気の効いたヤギが途中で食べてくれるから誰にも届かない
きっと生きているということがスーパーのチラシ裏に書いたメモ書き程度にどうでもよく
フリーダ・カーロと同じ程度にいい加減でどうしようもない
腐乱していく胸の奥でFrancfrancな心の入れ物はプランプラン千切れかけている
呼吸は腐臭を漂わせプシューコフーとダースベーダーのように音を立てて哀れまれ
マッチ売りの少女もきっとマッチなんて買って貰えないまま人知れず消える

明日は燃えるゴミの日だから可燃ゴミ集めなきゃ

なんてどうでもいいはずの毎日に繰り返し訪れるクダラナイ決め事を律儀に守る自分がなんだか可笑しい
生ゴミは燃えるから自分もまとめて出そうかなんてブルーマウンテンに憂鬱を乗せている
ここでは萌えないものは要らないらしいから きっと燃える自分はゴミなんだ
私はエコじゃなくてエゴだからレゴと一緒に燃やしてもらったら煤くらいは証になるかしら
証?そんなものは欲しくもないし残す必要もないはずなのに何故かそんな言葉が浮かぶ
誰かが見ているから?見て欲しいなんて頼んでいないのに?
捨てられるのは怖いから鉋で削るように自分を削いでいったらいつの間にか何も残っていなかった
出汁も出ないつまらない抜け殻 人という制服を被った空洞
そんな制服に襟章は不要だ
空ろで何も無い身に纏った人という形には

フリーダ
彼女は何がしたかったのだろう
トロツキーと不倫をして スターリンの肖像を飾って過ごすなんて

そしてエリー
何も無いからこそ求め 何も要らないからこそ拒み
虚ろに征服されて逝く心に 人の形を保つ制服を纏って
襟は破り捨て燃やしながら
花無き春に 再び世界に扼殺され その偽り故に終わることなく沈みながら
触れる手を解き 触れる手を抱き アンビバレンスに引き裂かれ
それでも世界を切り取る
その先に何があるとしても 何も無かったとしても

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「ひとのきかん」

発せよ記せよ ことば ことば ことば
口唇のぬめりを 指先のしなりを 以って

意識の解体が世界を懐胎し 生れ落ちた ことば

語れよ残せよ ことば ことば ことば
眼球の視矢を 土踏まずを 以って

人 ひと 一 再編し再生し 育ち熟れた ことば


聳え立つ摩天楼の揺らぎに
影を添える月に似て
詩は人の器官として世界を捉え
鏡面として映す

神経の高速道を神速で飛ばし駆け巡り
温泉のゲルマニウムに身体が浸かり湯巡り
あらゆる事象を切り取り
現前へと移す

生と死の対角線上に線分を引き
聖と詩を二分する等分を探し
机上の天地創造はまた
人の期間の有り様

かつて踏み締めし足を以って
人となり展開し転回した天界の矢が
火と共に人を失わせた歴史に
詩を以って槍とし死を以って盾とす

ひとふたまるまる
ロンドン塔が正午を指し示す時
豊穣なることば を以って
人は人へと還る
詩は再び世界を拓き

人の帰還が始まる
世界を呼吸するために

詩を
気管とし
器官とし
帰還が始まる

発せよ記せよ語れよ残せよ
ことばを掲げる炎として
火との奇観に歓喜の歌を

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「雪々」

降り
積り

覆われ
隠され

雪々
深々

町は侵食されてゆく

人々の歓声
犬の遠吠え

アラユルモノを包み
優しく 冷たく

結晶はやがて
溶け 流れ 消えゆき

東京タワーを霞める
朝靄を呼び覚ます

富士は見えるだろうか
頂に目深く被ったそれは

夢心地のうちに
町は元に戻り
営みに目覚ましが鳴り

何事も無く今日が始まる

知らず
分らず

過ぎてゆく白い世界

陽光に輝くことなく
闇に紛れ形作られ   ひっそりと失われる

世界
 せ かい


  ユメウツツ
 ソウウツ ツ


 セツ
  セツ
 ユキ
   ユキ

 窓越しの通りに足跡ひとつ


  珈琲の香りに湯気立ちこめて


  深呼吸
   寝呼吸

 ヒトヒトユキユキコノユビトマレ

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「脳メタボ症候群」

「烏がね、太ってるんだよ。ありゃぁ肥満だね。うん。間違いない。食べすぎだよ。それでさ、ぎゃーぎゃー啼いてるわけ。まだ足りないのかねぇ。頭良いって言うけどありゃぁ馬鹿だね。うん。間違いない。俺は一銭だって持っちゃいないんだから。啼かれたって困るんだよね。まぁ肥満の烏にあげるエサは無いけどさ。こっちだって食うに困ってるんだから。うん。でもね、不思議なんだよね。財布が痩せてるからジャンクばかりになるんだけど、それでも太るんだよね。うん。腹いっぱい食べても太るし、ひもじい思いをしてても太るし、なんだろうね。でもさ、あれなんだよね…」

そんなとりとめも無い話が延々続いている坂道の先に
一本の大きな木がある家が見える
誰の家だか知らない
あそこの住人も太っているのだろうか

「…でさ、そういうわけで、よろしくね」

さて、何を頼まれたのだろうか
聞き返すのも億劫なので、とりあえず「そういうわけ」らしいのでよろしくされておこう

烏は変わらず、丸々と肥えている
肥えて肥えて
烏の脂肪肝なんて笑い話にもなりゃしない

赤茶色した枯れ葉が舞う坂道の先に
大きな家が見える
あれ?大きな木だっけ?
ああ、木の大きな家だっけか?
脳肥満も困ったものだ
情報過多で感情過少で
ぎゃーぎゃーと啼いているだけで
聞いたことさえ覚えちゃいない

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